この展覧会では、現代のアーティストたちが産み出した新たな「影」のファンタジーをご紹介いたします。
電灯の普及する以前、夜には、月や星、炎といった光源が、今よりもずっと明るく輝いていました。そして、人や物の形を写し取り、実体を持たず、変幻自在に大きさを変える「影」は、たいへん不思議な(魔法のような)存在として、人々の目に映っていたことでしょう。
実際、世界には、インドネシアの人形劇ワヤンや、江戸の写し絵のように、さまざまな「影」の物語が受け継がれてきました。それらは、現代の私たちがみても驚くほど「映像的」な世界観を持っています。現代のCG(コンピュータ・グラフィックス)の世界においても、影の付け方は、その映像が本物らしく見えるかどうかを決める重要な要素の一つです。
本展の観客参加型の作品では、観客の落とす実際の影が、映像の中の偽物の影と交わり、それ自体でひとつの作品となっていきます。現代の高度化する映像環境のなかにおいて、本展が、影という身近な現象を通じ、人間のイマジネーション(想像力)を見直すひとつの機会となれば幸いです。
※映像が表示されるのに少々お待ち頂くことがございます。
「partner(パートナー)」
「Hiverner(冬ごもり)」
何も映っていないはずの鏡、枝しかないはずの植木。
でも、そこにはあなたにだけ見えるファンタジーの世界が拡がっています。
清水寛子
東京都出身。1993年より展示活動を開始。白黒を基調とした影絵などのアニメーションを空間や物に投映するインスタレーション作品を展開。2000年フィリップモリスアートアワード大賞受賞。主な参加展覧会として、2003年ディズニーグッズラボラトリー『DLT』展(ホテルクラスカ)、2004年ハローキティー誕生30周年記念展『KITTY EX.』(森美術館ほか)、2007年o’sulloc Tea House(韓国)ディスプレイ映像、2009年Style Meets People『ART DOME』(東京ミッドタウン)など。その他、イベント映像、ワークショップなども手がける。
「しゃぼんだま」
しゃぼん玉の影に、自分の影が触れると…。美しい音も魅力の作品です。
古川聖
1959年東京生まれ。入野義郎氏に師事、ベルリン、ハンブルクの音楽アカデミーでイサン・ユン、ジョージ・リゲティのもとで作曲を学ぶ。1979年〜99年までドイツにて作曲活動を行う。1991年に米国のスタンフォード大学で客員作曲家。カールスルーエ(ドイツ)のZKMにおけるアーティスト・イン・レジデンスを経て、現在、東京芸術大学先端芸術表現科准教授。代表作にマルチメディアオペラ「まだ生まれない神々へ」がある。
ウォルフガング・ミュンヒ
1963 年カールスルーエ(ドイツ)生まれ。シュトゥットガルト国立美術大学、ウィーン応用美術大学で美術を学び、1996年よりドイツのカールスルーエにあるZKM(視覚メディア研究所)にて、アーティスト兼ソフトウェア開発者として、様々な視覚メディア、音楽・音響のプロジェクトに従事。1997年〜2002年メルツ・アカデミー(応用美術大学)講師。ZKM、香港アートセンター、情報科学芸術大学院大学などでのアーティスト・イン・レジデンスを経て、現在、ラサール=シア美術大学(シンガポール)メディア・アート学部学部長。数多くの国際メディアアート展に作品を発表している。
「漁師とその妻」
「マリオネット」
「現実から夢」に至る「影」の寓話と「糸の切れた人形」がテーマのアニメーション。
タマシュ・ヴァリツキー
1959年ブダペスト(ハンガリー)生まれ。1968年より漫画映画の製作を開始、その後、画家、イラストレーター、写真家としても活躍。1983年よりコンピュータを使った制作を始める。1992年ZKM(視覚メディア研究所)アーティスト・イン・レジデンス、同研究スタッフを経て、 1997年〜2000年ザール芸術学校客員教授。1998年〜1999年まで、岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)のアーティスト・イン・レジデンスとして日本にて滞在制作を行う。その後、2003年マインツ専門大学メディアデザイン研究所教授を経て、2005年よりザール芸術学校教授。ヴァリツキーの作品は、パリのジョルジュ・ポンピドゥー・センター、ボンのオッペンハイマー・コレクション、東京のビデオギャラリーSCAN等に収蔵されている。
「Little Glimmer Forest」
「KAGE-table」
カラフルな円錐形のオブジェや、光の木の実に触れると、まるで生き物のように「影」たちが活き活きと動き出し、またどこかへと消えていきます。
近森基++久納鏡子
現代の映像技術を駆使しながら親しみやすい表現で知られる2人組のアート・ユニット。 日常の何気ないモノや現象に“ほんのひと工夫プラスして世の中に発信していこうとする”というコンセプトのもと、数々の作品を発表し、世界各地で高い評価を得ている。第1回文化庁メディア芸術祭 大賞、2007年グッドデザイン賞(建築・環境デザイン部門)受賞。主な参加展覧会として、1997年『Ars Electronica』、2002年『映像体験ミュージアム』、2005年『Ombre et Lumière』(ポンピドゥー・センター)、2008年『もしもの森』(山形美術館、鶴岡アートフォーラム)など。また、公共空間やイベントの映像演出、プロダクトデザイン、大学との共同研究、ワークショップも積極的に手がけている。
「影のシルエット」
「誘蛾光」
歪んだ鏡を用いる古典的な絵画技法「アナモルフォーシス」と現代の映像技術を融合し、幻想の世界を作っています。
前川知範
1984年生まれ。実写とCGの関係に着目し, それらの合成によるナラティブな映像作品を多数制作。入れ子構造の構成を特徴とした作品は、マルチプロジェクションによる発表も少なくない。現在は、CG技術と現実空間の関係性を軸に、人の錯視を利用した映像表現の研究と制作を行っている。
読みきかせの会 Vol.2
~企画展「影のイマジネーション 星降る夜の魔法使い」にちなんで~
2009年7月11日[土]開催
「読み聞かせの会」第二弾。今回は夏バージョンです。前回に引きつづき、女優の雛菊(ひなぎく)さん、音楽家の中野亮介さんをお迎えし、美しい声色と音楽で、詩と童話のファンタジー世界に皆さまをご案内します。
会期 |
2009年4月11日[土]~7月20日[月・海の日] |
---|---|
開館時間 |
9:30~17:00(入場16:30まで) |
休館日 |
月曜日(祝日の場合は翌平日) |
会場 |
映像ミュージアム |
映像ミュージアム入館料 |
大人¥500/小中学生¥250(常設展示もご覧いただけます) |
主催: |
埼玉県 |
---|---|
後援: |
埼玉県教育委員会/川口市/川口市教育委員会 |
企画: |
株式会社デジタルSKIPステーション |
協力: |
カラーキネティクス・ジャパン株式会社 |
映像ミュージアム
048-265-2500